一人暮らし初めての夜
スポンサーリンク
勤め始めて1年経った頃、家を出ようと思った。正確には出られると思った。
親に伝えると、「まだ早いんじゃない?」と言われた。私の感覚では年齢としては遅い方だと思う。
大学も片道2時間半かかったが実家から通ったのは「一人暮らししたら死ぬかも」と言う不安があった。
病気に神経質になっていたのですぐ病気になって死ぬと思った。
今は一人でも風邪で寝込んでも生きていられるし、病院にも行ける。当たり前のことだが当時は死ぬとしか思っていなかった。
そんな私が社会人になって他人を見た時、「自分でも大丈夫だ」と思った。
すぐに行動に移し、不動産屋に行き、新築のアパートを借りられた。借り手としては一番だったようで、入居時にアパートには誰もいなかった。
初めての夜、しんとしていた。音がしない。誰もいない建物で私一人。
寝る時にはまだベッドが届いていなかったので寝袋を持ってきて寝た。
寝袋に入って、横になった時、笑いがこみ上げてきた。
すごく嬉しかったのを覚えている。笑っていたと思う。
「やっと一人になれた」、「自分も一人暮らしできる」と思った。一人前になったかのように思った。
父には期待されていたと思う。母は理解してくれていたと思う。でも、高校あたりから普通の感覚には戻れなくなった。当たり前と言われていることが疑問に思えて来て、なんで高校に行かないといけないのかとか考え始めていた。周囲からは「おかしくなった」と言われた。
今思えば、おそらく、「サボりたかった」んだと思う。疲れたって。
小学校、中学校といい子で過ごした。いい子であるべきと思った。
でも、一人暮らしを始めたその日の夜、「もう誰にも干渉されない」と思うと笑いがこみ上げてきた。
一人暮らしは嬉しくて嬉しくて。楽しくて楽しくて。辛いと思ったことはない。寂しいと思ったことはない。
自由にのびのびとやってきた。全く後悔はない。というより、それしか選択肢がなかったとさえ思う。
1K、20平米のあの部屋で過ごしたことは死ぬまで忘れないと思う。
いい人生だった。
ひとりぐらしもプロの域。 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)
- 作者: カマタミワ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2016/02/19
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 近藤陽介,一人暮らしの女の子を守る術研究会
- 出版社/メーカー: STUDIO CELLO
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 37回
- この商品を含むブログを見る