生活保護について思うこと
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最近、「貧困」という言葉をニュース、新聞、ネットで見聞きする。
2010年過ぎた頃からは頻繁に聞くようになった。
生活保護率が戦後並とか。
過去最多とか。
数年前、同級生たちと話した時。
「俺の税金(年収1500万)が生活保護に使われているかと思うと許せない」
いや、お前もいつお世話になるかわからないぜ。
「生活保護を簡単に受けられるようになったのが問題。以前は生活保護を受けたら末代までの恥って言われていたのに」
末代の恥って、いつ生まれだ。
これらの発言の背景には目の前に福祉を受けている人がいないので実感がないのだと思う。
感覚的には生活保護を受けるぐらいなら切腹するべきというあたりか。
なんて言うか、付き合いきれないと思った。
考え方が古いと思った。
そんなことを言われる生活保護ってどんなものなんだろうか。
生活保護は敷居が高い?
まずはどこに相談に行ったらわからない人も多いのかもしれない。
役所に行って、「生活に困っているんです」と言うのがどれほど勇気のいることか。
人によっては当たり前の権利だから敷居が高いと思わないという人もいれば、
こんな制度、初めて知ったし、上述のように「末代の恥」と思われてしまうという人もいるかもしれない。
敷居の高さは人それぞれかもしれない。
保護課って?
役所のどこに行くべきかは市区町村役所の「保護課」と言うようなところだ。
受付で生活保護の担当課はどこかと聞けばわかる。
そこには「ケースワーカー」という人たちがいる。地区によって振り分けられている。
ケースワーカーは名前から言って「専門家」のような響きがあるが専門家ではない。役所職員だ。今年から総務課から異動で来た人かもしれない。
だから冷たい印象を受けるかもしれない。だって、専門職ではないから。
割り切るべきだろう。
憲法25条
憲法25条には、
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
と言う、生存権の保証がされている。
なので日本国民であれば誰でも生活保護を申請できる。
申請であって、受けられるかどうかは条件次第。
申請主義
生活保護は申請しなければ受けられない。
スタート地点に立てない。
申請したのち審査(ミーンズ調査)があり、条件をクリアすれば保護の開始となる。
申請しても不受理の場合、再審査請求もできる。
保護の補足性
生活保護は他方他施策優先なので先に利用できる制度などは先に利用し、それでも足りない部分を補うということ。
例;国の定めた最低生活基準(居住地、年齢、家族構成で変わる)が10万円の世帯が
働いて収入が3万円あれば残り7万円を生活保護として支給するということ。
例;障害を負ってしまったために働けない。障害年金をまずは申請し、それでも最低生活基準を下回った場合、その差額を支給する。
最低生活基準とは
居住地、年齢、世帯人数によって決まる。
支給額は国が定めていて、毎年改正される。
例;東京都23区に居住している、20代、一人暮らしの場合。
2015年の23区は1級地-1なので生活扶助(生活費)は「基準額丸1」の1類+2類。
具体的には41440円(大雑把に言って食費)+44890円(大雑把に言って光熱費他)で
合計86330円が最低生活費。
生活扶助の1類、2類についてはここ
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/09/s0930-7a1-2.html
これに一人暮らしなので住宅扶助(家賃)が支給される。
東京都の住宅扶助額
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/seikatsu/hogo/jyuutaku_minaoshi.files/jyutakuminaoshi.pdf
23区は53700円(2015年)なので、これが加算されるので、
この人の最低生活基準は86330円+53700円=140030円。
更に、障害者(障害者手帳所有者)には障害等級別に加算額がある。
3級なら+17530円。
これで合計15万7560円。
2級なら26310円なので16万6340円。
障害者支援施設で働いていると結構な確率で利用者の方が収入が高かったりする。
職員で手取り16万もらえるのは国家資格保有者でも若手なら少ないだろう。
昇給が1000円/年として10年働いてやっと上回るかもしれない。
職員が利用者より少ない給料で働いているところがしばしばある。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/kijun2804.pdf (平成28年度の最低生活費) 2017.03.16リンク訂正
最低生活費については上記リンク参照
また、冬季加算と言うものもある。冬場の灯油代なんて言われている。
例えば、23区で一人暮らし、フルタイムで働いていて、手取りが140030円以下なら生活保護を申請することできる。
生活保護制度上、上にあげた「健康で文化的な最低限度の生活」費との差額を受給できることになる。
手取り12万円なら、2万30円。
市区町村は制度上、申請は審査の後、却下できても申請して来たものを拒否できない。審査せねばならない。
よく窓口で申請さえ受けられなかったというニュースを見るが、生活保護法違反及び憲法違反である。
背景には自治体の財政難があるため、福祉への締め付けがあると思われる。
もちろん、申請し受理されたら「自立への指導」として仕事を変えることをケースワーカーから指導されるだろう。今の仕事を辞めて別の仕事を見つけなさい、ハローワークに行きなさいと。
また、親族で保護、援助できるものがいないかを職権で審査できる。
援助ができるのならその足りない分を支給する。
万が一、問い合わせが来ても援助できないと言えばそれ以上は踏み込んでこない。
世帯単位
人に支給するのではなくて世帯に対して支給する。
簡単に言えば生活を共にしている人が世帯単位。
(シェアハウスは除く)
世帯分離というものもある。家族二人で生活しているが自分の生活で精一杯という時、もう一人の人だけに支給するというような方法。
家を出るのが世帯分離と間違いやすい。
家がない場合。ネットカフェで暮らしているなど。
家がないと保護を受けられないというメディアの間違った情報があるが、家がなくても問題はない。
基本、住民票に基づく保護ではなく、実質生活を送っている地域が保護担当になる。
(よく担当役所がどこになるかで揉める。特に「移管」=引っ越しは担当者が大変。)
申請後、保護が始まり、自立支援施設などに居住することになる。
(生活保護の闇ビジネスでよく問題になる施設もあるので注意)
原則日本国民のみが対象
通知などで人道的支援ということで支給されることもあるが、基本原則日本国民のみ。
ちなみに反社会的集団構成員は保護を受けられない。つまり暴力団。
保護を受ける場合には暴力団を離脱することを宣誓する必要がある。
資産の活用
持っている資産があるのならそれを優先し、活用してから保護を受ける。
例;1千万円、遺産相続したら、一旦保護を打ち切り、遺産を使い切ったら再度申請する。
持ち家の場合、ほとんどの場合持ち家を手放す必要はない。持ち家を資産活用する。
現在、住んでいる家が居住地の住宅扶助より高い場合は住宅扶助範囲内の家へ引っ越すことを指導される。
車は多くの場合手放して現金、生活費に変えるよう指示される。
例外として交通が不便で仕事をするのに車以外では通えない場合は許可される。
仕事、就業が優先。
通院で必要な場合はタクシーが無料で利用できる。
ただし、担当医師が通院にタクシーが必要なことを証明する文章が必要。
一時的でも就業して収入があった場合は申請しなくてならない。
その分、支給額を減らす。
通帳に記帳した金額が5万以下なら資産がないと判断されるだろう。
もちろん、他の口座に現金を意図的に隠して受給したら詐欺罪で告訴され、それまでの支給額の返済をしなければならない。
福祉とは
おおよそ、生活保護について概要を書いてみたが、今のご時世、手取り14万以下の人なんていっぱいいると思う。
福祉とはなんだろう。
ずばり言えば法律だと思う。
法律、制度によって福祉は成り立っている。慈善事業ではない。
財源は税金により成り立っているので厳しく審査されるべきである。
そして適正運用されるべきである。
結局のところ、生活保護を受けるかどうかは、
「その制度を知っているか」「使うかどうかは本人次第」だ。
制度そのものを知らない場合は致命的だが、誰も教えてくれないのは事実だ。
無知は罪だ。無知が貧困を生む。
生きていくための教育を優先すべきなのだ。
公式一つ教える前に福祉制度を一つ教えてもいいぐらいだ。
最低生活を保障された上で教育を受けるべきなのだが・・・。
困ったら行政へというのがメインストリームだが、行政にさえ行くことをためらう人もいる。ためらう人は制度を知らないというわけではないのだと思う。生活保護を受けることへのためらい、不安、心配があるのだと思う。
例えば、高額療養費制度なんて言葉を初めて聴くという人もいるかもしれないが、これを知っているかどうか、教えてもらえるかどうかで医療費が全く変わってくる。
これが福祉だと思っている。
日本は福祉国家なのか
福祉国家の部類に入ると思う。ただし手厚いかというと手厚くはない。
悪いという人は少ないと思うが、良いという人も少ないと思う。
福祉国家のデメリットとして失業者の増加というものがある。
働かなくても十分保証してもらえると言う判断からだ。
北欧などの福祉国家の失業率の高さは有名だ。
福祉国家を表す言葉として高負担高福祉だ。
つまり働いていれば高い税金を負担し、いざとなったら高い福祉を受けられる。
高負担高受益と言い換えてもいい。
高負担にするかどうか
消費税を10%にするかどうかでここまでもめている国がこれから高福祉を受けられるかというと不安だ。
つまり、税収入がないまま、生活保護受給者は増え続け、その子供達は高等教育を受けることはできず、収入ある生活を送れず貧困の連鎖は続き、税収入は落ち込む。
将来的には消費税は17%以上、介護保険負担を増やさねば、国家は破綻すると思うが、今まさに手をつけないといけない喫緊の課題だと思うのだが・・・。
現在の高齢者は今の若い世代よりも壮絶な格差社会だと思う。
0か100かほどの違いがある。
少子化が進んでいる今、支え手も減っている。
移民を受け入れるのか?
老人を見捨てて子供の福祉に回すか。
1000兆円を超える財政赤字を抱えながら、「超超高齢化社会」を約20年後に迎える。
その時、日本はどうなっているのだろうか。
今年生まれた子供が成人する時である。
その時、私は、あなたは、子供は何を思う。
※現在私が知り得るもので書いたが、知識、情報の間違いがあるかもしれない。あったら指摘してほしい。
ぜひ、多くの人で考えていきたいことだと思うので。
これ、面白い。現場の大変さがよくわかるし被保護者の気持ちもわかりやすい。
綺麗事だけではなくリアルだと思う。